髪の毛と畳みの間に感じる、粘ついた感触が少しだけ気持ち悪い。そんなことを自分への言い訳にして、私は自分の髪や肌に散らばった士郎の精液を指ですくって口へと運んでいた。
「ん。士郎の、すごい濃くて……」
私達は今、体だけとはいえ主と使い魔の関係だ。当然その濃い物の中にはサーヴァントの体を持つ士郎の魔力も含まれているわけで。男の生臭い香りに酔っただけでなく、私は本当に精液を舐め取ることに夢中になってしまった。
「はぁっ、ん。美味しい」
コクンと喉が鳴り、ドロっとした塊が喉に絡みながら体内へと落ちていく。胃の中に納まった熱は、じんわりと内臓に広がって、体の中から私の官能を呼び起こそうとしているかのようだ。
その引き金になったのは言うまでもなく、外からの刺激なのだけれど。
「んぁ、アーチャー………気持ち、いいッ」
イったばかりだというのに、私の躰は治まることを知らないらしい。ゆるゆると加えられていたのは、アーチャーの指の感触。イったばかりの私の蜜壺に、そっと触れるだけの力加減でアーチャーの指が触れられていた。
達したことで大量に溢れ出た愛液が、ぐちゅぐちゅと厭らしい水音を奏でている。
「ぁ……士郎も、もう?」
ふと見上げれば、未だ先端に白濁とした体液を滲ませたままの士郎が、全く衰えていない様子でそそり立っていた。
「ねぇ、それ……もっとちょうだい」
力の入らない躰を何とか起し、四つん這いになって士郎の肉棒へと顔を近づける。
「そんなに、溜まってたんだ」
「っ! そ、それだけじゃないぞっ。遠坂が、あんまりにも可愛いから、その………」
からかわれたと思ったのか、そう言いながら浅黒い顔を赤くして、ふいっと顔を背ける。
アーチャーの風貌でそんな仕草は反則だ。もっと、士郎にしてあげたくなってしまう。
「士郎、こっち見て」
「────っ!!」
彼の視線が自分に戻るのと同時に、私はあーんと口を開き、舌で亀頭を包み込むようにしながらゆっくりと士郎を口内へと招きいれた。
たぶん、それが効いたんだろう。赤かった顔を更に真っ赤にして目を見開いた士郎の肉棒は、私の口内でヒクンと跳ねるのだった。
────ちゅ、じゅる、こくん
「ク、ぅ……!」
尿道に残った士郎の精液を吸い出し、飲み下す。未だ敏感になったままのソコは、私が強く吸い付く度にヒクつき、士郎は四肢を硬直させて感じているようだった。
「凛、そろそろこちらも相手をしてもらおうか」
その声に視線をずらすと、いつの間にか全裸になったアーチャーが、私の方へ彼の中心を差し出していた。
「ふふっ。アーチャーも、我慢出来なくなっちゃったの?」
「勘違いしないで貰おうか。凛、私は一度君をイかせることが出来ているし、これは純粋な等価交換だ。
惚ける君に付け込んで、自分だけ満足するような大馬鹿者と一緒にするような発言は、即刻撤回してもらいたい」
「………悪かったな」
「ぷっ」
そんなアーチャーに、私は思わず吹き出してしまった。
「────な、遠坂まで!」
「違う違う、士郎に笑ったんじゃないわよ。
アーチャー、そんな性根の曲がった言い方しか出来ないんじゃ、私も気分を削がれちゃうじゃない。たまには士郎を見習って『私の感じてる姿に興奮した』くらい言えないの?」
「小僧を見習って……だと?」
「そうよ。その顔で根性悪いこと言われたら、余計に虐めたくなるんだから」
「っ!」
でも今ここでアーチャーを責めたいわけじゃない。怒りに顔を歪めた彼が二の句を告げるよりも前に、私はアーチャーの、まだ大人のモノとは言い難いソレを口の中に招き入れた。
「ん、ふぅん………」
アーチャーよりも少し強い、でも本質は同じ香りが口内に充満していく。
さっきまで士郎の浅黒い肉棒を咥えていたお陰で、一回り小さく感じられるソレは、さっきよりも容易に口内に収まったようにも感じられる。
「ちゅ、ん。ほら、アーチャーだってこんなに先っぽ濡れてきちゃってるんだから、やっぱり我慢してたんじゃない」
「それはあまりにも短絡的な発想だな。
この体は正直、女性からの愛撫にあまり免疫が無いようだ。君のその舌の感触が、ここまでダイレクトに感じられるということは、嬉しい誤算ではあるがね」
一瞬、もっともらしいことを言われた気がして納得させられそうになったが、容姿が士郎なだけでこうも冷静に相手を見ることが出来るのだろうか。アーチャーの言っていることは単に“士郎の体は自分のより敏感だから気持ちがいい”と言っているだけなのだと気付かされる。
そして、この嫌味ったらしい言い草は、彼が自分の立場を誇示するための、云わば防衛手段なんだと思わずにはいられなかった。
だから今だけは、そのことを指摘したり、彼に反論したりはしないでおく。同級生の姿をした年上の男性に、恥をかかせるような真似をしてはいけないと思ったのと────こんな時くらい優位に立ってもらって、さっきみたいに翻弄されたいという欲望が私の中にふつふつと湧いていたこともあったから。
「んむ、ふ、んんっ」
四つん這いのまま右手を添え、前後に頭を動かしてアーチャーの肉棒をしごいていく。そんな私に注がれる二人の視線を熱く感じながら、私もまた、彼の味に昂ぶりを隠せなくなっていった。
「ぁ、ふぅんッ」
閉じられた蜜壺がもどかしい。アーチャーの肉棒に添えた右手を、自分の入り口へと持っていきたい衝動を必死に抑えつつ、私は焦れたように太腿を擦り合わせてしまっていた。
「遠坂、辛い……のか?」
アーチャーの横にいたはずの士郎の声が、後方から聞こえてくる。
意識をそっちに移した瞬間、擦り合わせていた太腿が開かれ、垂れ始めていた愛液を掬うように、士郎の太い指が私の蜜口を撫で上げていた。
「ひぁっ! はぁあンッ!!」
思わずアーチャーの肉棒を吐き出してしまう。
一度達してしまった私の躰は、その先を求めて更に敏感になってしまっていたのか。それともさっきよりも少しだけ乱暴で、士郎の体をしたアーチャーのよりずっと太い指先がより強い刺激を与えてくれたのか。ビリビリとした快感は、私の体中の力を抜いていってしまう。
「あ、んぁっ、ひやぁッ!」
あっという間に私の上半身は倒れてしまい、辛うじて添えた右手だけは未だアーチャーの肉棒を掴んだまま離していなかったけれど、それに刺激を与えたりなんてする余裕なんて無い。
上半身が沈んだことで、私の腰は士郎の方へと突き出した格好になり、秘部の全てを士郎の目前に曝してしまっていた。
「はぁっ、ひぅ……ッ!」
「遠坂、すごい……。指が、こんな簡単に沈んでく」
そう言いながらも、士郎はその指を奥へと押し込んだりはしない。入り口の辺りを出たり入ったりするだけの感覚に、私の奥はどうしようもないほど焦らされてしまっていた。
「凛、乱れるだけでは終わらないぞ」
幼さを残す同級生の声色で、アーチャーが私を急かす。
判っている。さっき私をイかせてくれたのはアーチャーで、私だってちゃんと、アーチャーにも気持ちよくなってもらいたいと思っているんだから。
「ん、ぁ────」
私がもう起き上がれないのを知ってか、アーチャーは畳みの上に胡座を掻いてくれていた。これなら、今の私でもアーチャーに届く。
私は鉛のように重くなった上半身を無理矢理起し、まだあまり愛してあげられていないアーチャーの肉棒に、再びそっと口付けた。
「む………ふぅんっ!」
激しい快感に漏れてしまう吐息が、自然と鼻に掛かる。それに息苦しさを感じながら、私は唾液をアーチャーの上に垂らしつつ、ゆっくりとソレを口の中に含んでいった。
アーチャーの先端から滲み出た体液と私の唾液とが混ざり合い、ぬるっとした感触が舌に触れる。私の唾液の量がそんなに多かったのか、唇には全く引っ掛からずに、アーチャーの肉棒は私の口内に収まってしまった。
そのままゆっくりと頭を上に上げると、同級生の手が私の頭に優しく触れ、さらさらと黒髪で遊び始める。それはまるで、幼子の頭を撫でるように優しくて、あの意地悪な使い魔が一体どんな顔をしてそうするのか、なんとなく気になってしまった。
まるで愛おしい人を慈しむように、とんでもなく優しい手の平の感触────それを私は心地良く感じながら、それに応えるようにアーチャーを愛することに集中していく。
「んっ、ふぅっ、んぅぅ!!」
それでも、焦れた自分の躰を制御することは難しかった。頭を上下させることで必然的に揺れてしまう自分の腰は、士郎の指の動きと相俟って私の官能を引き出していってしまう。
士郎の指の形を、膣壁で嫌というほど感る。それは、自分の膣内がきゅうきゅうと収縮して、もっと奥へ欲しい……太いモノが欲しいと訴えている証でもあった。
「遠坂、そんなに欲しいのか?」
「んっ! んっっ!!」
浅ましいにもほどがある。私は士郎の問い掛けに、アーチャーのモノを口に含んだままウンウンと頷いてしまっていた。
「うん、解った。じゃぁ遠坂、挿れるからな」
「む────んっ、ふんんんんッ!!!」
そこから士郎の行動は早かった。指を引き抜くのと同時に私の蜜口に先端を当てると、何の抵抗も無く簡単に、士郎は私の膣内へと入り込んでいってしまう。
「未熟者め。
結局は自分が挿入したかっただけではないか。本当に凛を感じさせたくば、もっと焦らしてから挿れてやるのが優しさというものだ」
「言ってろ。
遠坂が欲しがって、俺も挿れたかったんだ。お互いに我慢する必要なんて全然無い。自分の加虐心を満足させるだけの愛撫なんて、俺は御免だっ」
やっと膣内に与えられた圧迫感に、私は二人の会話に割り込む余裕なんてない。人を無視して勝手な言い分を言い合う二人にほんの少しだけ呆れながら、私が出来たことといえば、込み上がってくる快感に耐えることくらいなものだった。
「ん、ふぅ……」
「凛、大丈夫か?」
アーチャーが頭を撫でながら尋ねてくる。さっき聞こえた彼の言い分はあんまりだったけれど、触れてくる優しい手の感触に応えたくて、口内から肉棒を吐き出して彼の方へ視線を向けた。
「………ほし、かったの。我慢……できなくて、わた…し」
全く呂律が回らないことに、私自身が一番驚いた。
持ち上げた首が重い。力が全く入らなくて、ふるふると震えながらアーチャーを見上げる私は、彼から見たらどれほど弱々しく映っていることだろう。
「あぁ、判っている。今は、君が感じるままに乱れればいい。
だが、私のことも気持ちよくしてくれるのだろう?」
「う、ん……。アーチャーの、美味しくて………ん、ふぅっ!」
会話の途中だというのに、まるで自分のことも忘れるなと言いたげに士郎の腰がゆっくりと動き始めた。
まだ突き上げるような激しさなんて全く無いのに、それだけで私は、胡座を掻いたアーチャーの脚の上に上半身を預けてしまう。
「ふわぁっ、ん、あ……ひやぁぁ………っ」
ゆっくりと奥まで収まったかと思うと、ずるずると肉まで持っていきそうな感覚で引き抜かれる。単純なはずの出し入れは、士郎の肉棒を奥へと誘う自らの肉壁によって、様々な感覚を私の脳髄に刻んでいく。
亀頭が蜜壺を広げていく感触。奥まで届いた時に擦り上げられるとんでもなく気持ちいいポイント。腰が引かれた時の喪失感と共に収縮する膣壁の切なさ。
私は目の前でその存在を主張したまま、私の手の平だけを感じているアーチャーの肉棒へと舌を伸ばし、その形を慈しむように舐め始めていた。
「んちゅ、れろっ、じゅるッ」
コレと同じモノが……コレがいずれ成長したモノが私の中に収まっていて、こんなにも私を気持ちよくしてくれている。その事実が、私の愛撫に熱を込めさせていた。
「んっ! ふぅんッ!!」
少しずつ少しずつ、士郎の腰の動きが早く激しく変化していく。
与えられる快感が大きければ大きいほど、私の息苦しさは増していくし、本当ならアーチャーへの愛撫もおざなりになってしまう所だろう。でも、私は一心不乱に目の前の肉棒にむしゃぶりついていた。
自分が気持ちよくなっていることをアーチャーにも伝えたくて、士郎だけじゃなくてアーチャーにも気持ちよくなって欲しくて────
「んぅッ! んんんっ! ふうぅんッ!!」
私の激しい愛撫に応えるかのように、士郎の腰の動きは本格的になっていた。パンパンと肌と肌がぶつかる音に加え、掻き回されることで辺りに飛び散ってしまっているのだろう。ぐっちゃぐちゃという激しい水音が私の耳に届いていた。
酸欠で頭の中が真っ白になっていく。一生懸命アーチャーのを愛撫しているはずなのに、それももうちゃんと出来ているのか自分では判らない。極度の興奮で瞳からは涙が零れ、平衡感覚さえも失っていく。
「遠坂っ、そんなに……締めたら……っ、くッ!」
後ろで士郎が奥歯を噛み締めている。うん、私も……もう……………
「っ! んぷぁ、むぅッ!?」
どれが一番最初だったのか、ぐちゃぐちゃになった私の頭では判断できなかった。
頭を掴まれて、喉の奥に肉棒を突っ込まれたのと同時に、口の中にはどろっとした液体が大量に注ぎ込まれ、高く上げた二つの柔肉をがっちりと掴んだ手が私の腰を引き寄せたかと思うと、熱いものが胎内に注ぎ込まれていく。
その両方の感覚を味わいながら、私は目の前がチカチカとフラッシュしてしまうほど激しく、意識を飛ばしてしまっていた。
「ん、んぐッ! ぅえっ、ゲホっ!! ゲホゲホゲホッ!!」
口に出されたアーチャーの体液は士郎のそれと変らずに大量で、飲み込み切れなかった精液が気管に入り込みそうになり、思わず噎せ返ってしまう。それで我に返れたのか、その間にもじんわりと広がっていく熱い精液を胎内に感じ、士郎ってばさっき出したばっかりなのに……なんて心の中で突っ込みを入れている自分がいた。
「ケホケホッ! ケホっ、コホ……っ」
咳が落ち着くに従って、痺れていた脳髄が和らいでいく。無意識に肺に空気を吸い込んでいる自分に気付いて、やっぱり酸欠だったんだなぁなんてぼんやりと思った。
「────っ、は、はぁっ」
士郎の荒い呼吸が耳に届く。ずるりと私の胎内から肉棒を引き出すと、子宮に胎内に納まり切らなかった精液がぼたぼたと畳みの上に落ちていき、彼の手から解放された私の腰は、崩れ落ちるように畳の上に寝そべった。
ぽたぽたと背中が濡れていくのは、きっと士郎の汗なんだろう。夢中に私を突き上げる姿を見ることができなくて、少しだけ残念だななんて思った。
私の目の前にいるアーチャーはというと、満足そうな笑みを浮かべながら、じっとりと汗で額を湿らせていた。
「アーチャーも、気持ち……良かったの?」
「君の口内に吐き出してしまった量で判るだろう、凛。最後は、乱暴な真似をしてしまってすまなかった」
そう言ってすまなそうに歪められたアーチャーの笑顔は、何故だか少し切なそうで……。
「………アーチャー?」
彼の脚の上から躰を起こせない私は、下からじっと彼を見つめるだけだ。そんな私の不安に気付いてしまったのか、一瞬見せた切なそうな笑顔はその表面からは消え去って、私を追いつめる時の不敵な笑みに変っていく。
「そう心配そうな顔をするな、凛。私がこの程度で満足するはずが無かろう」
「────え?」
「そうだぞ遠坂。俺だってまだ全然萎えないんだ。終わりだと思って気を抜いてると、最後まで持たないぞ」
「全然って……はあぁっ!?」
「ほら、このままでは私が動けないだろう。それに雀の涙ほどの魔力でも、小僧の回路に流れていた大事な魔力だ。全部取り込んでしまって損は無いと思うぞマスター」
「一言余計なんだよ、おまえは」
士郎の抗議は完全にスルーしたアーチャーは、自分の脚や股間に纏わり付いた自分の精液を指で掬い、ご丁寧に私の口元へと持ってくる。
しかし、信じられないという視線を向けたままそれをなめ取ろうとしない私を見て、ふむ、と考え込むような表情をしたアーチャーは、「気持ちが冷めてしまったようだな」なんて呟いた後、にっこりと極上の笑みを浮かべて死刑宣告してくれた。
「ならば、再び君をその気にさせるまでだな」