「とおさか―――ほんとう、か? 俺、うれし…っ」
「ばか……、ばかーぁっ!」
スピードが上がる。遠坂も気持ちいいなら遠慮なんて要らないじゃないか。腰を掴んでいる手にぐっと力を込めると、きゅっと遠坂の肉壁が応えてくれた。
「遠坂、俺…も。俺も、遠坂の中、気持ちよくて…」
「ばかばかばか……士郎のばかぁ―――」
速度を上げ、動物のように交わる。俺たちの会話は全く噛み合っていないだろう。それでも感じている熱が同じなら、この快感を遠坂と共有できるなら、俺がどれだけ遠坂に溺れているのか、伝わってしまっても構わない。
「はっ……士郎ぉ」
首だけでも俺の方へ向けようと、力なく遠坂が足掻く。が、俺に突き上げられていては身動きも取れないようだ。
しかし、正常位にしてしまうと遠坂の背中が床に付いてしまう。あの綺麗な背中が擦れてしまうのはいくら理性がほとんど残ってない俺にも忍びないと感じられた。
―――つぷんッ
「あ…っ」
遠坂の膣内から肉棒を抜き去る。そして、脱力しかかっている遠坂の腕をひっぱりこっちを向かせると、あぐらを掻いた俺の上に抱き寄せる。
「ふわぁんッ」
肉棒に手を添えて角度を変えてやると、力の入らない遠坂の重みで俺たちはあっさり繋がってしまった。
「は…ん、簡単に、入っちゃった…」
「遠坂の中、ドロドロだもんな」
「誰の所為よぉ」
「遠坂が、感じてるからだろ」
「な!馬鹿…っ」
図星なんだろう。真っ赤になる遠坂が可愛くて、目の前にあった唇に自分の唇で触れた。それから二人で微笑み合うと、それを合図に俺はラストスパートをかける。
「ふぁっ!はん!あぁ!」
遠坂は俺の首に腕をしっかりと回してしがみついている。耳元で聞こえる遠坂の喘ぎ声はたまらなく可愛くて、もっと深く交わりたくて、俺は遠坂の膝を両手で抱えた。
「あっ!ダメぇ!!」
足という支えすら無くした遠坂の躰は、重力に逆らえず全ての体重を俺と繋がった部分で支える羽目になった。必然的に俺が腰を突き上げ、膝を抱えた腕の力を抜いただけでその交わりは深くなる。
悲鳴にも似た喘ぎ声を上げ、遠坂の爪が背中に食い込んできた。
「―――くっ」
「ああぁっ!いやぁ!奥…はあああぁ!!」
アップにしていた髪はいつの間にか全て解け、俺の肩や顔にも纏わり付いてくる。遠坂の髪の香りに包まれ、深い挿入を繰り返していた俺にも限界が近づいた。
「遠坂、遠坂…」
「ああ、あぁん、はぁっ、んあぁ、しろ、しろ…おぉ!」
何を言っているのかもう判らない。躰だけになった俺たちは、後は獣のように昇りつめるだけだ。
「と、おさか。とおさかっ……遠坂ぁッ!」
「しろぉ、キテ、ね、しろ…しろうーーーッッ!!」
遠坂の中に己を吐き出す。柔らかな肉壁に誘われ、きゅうきゅうと絞り上げられるこの感覚は、何度味わっても気持ちいい。それに、俺の精射の間中イキっ放しになる遠坂の躰の痙攣が愛しくてたまらないんだ。
「は、あぁぁ……」
走り回っているのだろう快感をその細い躰で受け止め、遠坂はゆっくりとその身を俺に預けてくる。彼女の余韻を損なわないよう優しく抱きしめると、息が上がって何も話せない遠坂は、自分の腕に力を入れることで俺に応えてくれた。
◆◆◆◆◆
「大丈夫か?」
「―――もう、無茶するんだから」
遠坂の息が整うのを待って問い掛けると、そこにはいつもの遠坂凛がいた。
相変わらず俺たちは繋がったまま。向かい合って抱き合って、呼吸も鼓動も熱も、その全てを共有している。
「髪、ぼさぼさになっちゃったな」
「え? あ、ほんと。解けちゃったのね」
ようやく遠坂は俺から体を起こし、手で髪を整え始めた。しかし中途半端に水分を蓄えた遠坂の長い髪はそんなことではまとまらない。あちこちに貼り付いた髪を少しずつ指で後へと流していくが、それも細かい作業で切りが無い。
「遠坂。俺は体を流したら出るから、そのまま髪洗ったらどうだ」
「ん。そうね……」
それは同意の口調ではなく、むしろ考え込むような雰囲気で―――
「ね、士郎。髪洗って」
「――――はい?」
なんか今日は空耳かと思うような事が多い気がするんですが。
「だってあんなにされたら、力が入らないもの。その位いいじゃない」
真っ赤になって怒ったような顔をして、拗ねた口調でそんなこと言われたら……俺は自分が再び元気になりそうな気配を感じ、遠坂から己を抜き去った。そのまま遠坂を椅子へ座らせると、覚悟を決めて腰にタオルを巻いた。
あぁもう、そんな風に言われたら、断れるわけ無いじゃないか。
「遠坂も、ほら」
シャワーヘッドに掛かっていた遠坂のバスタオルを手渡す。俺だけ隠すのも変だし、この明るさの中上気した顔での裸体は正直刺激が強すぎる。このまま何度もしてしまいたくなる衝動を抑えつけ、俺は遠坂が持ち込んだシャンプーを手元に用意し、シャワーを捻る。
「遠坂、前屈みになれるか?」
「ん。こう?」
バスタオルを巻いた遠坂は、両太腿に上半身の体重を掛けるように体を倒す。俺は、彼女の顔にお湯が掛からないよう気を付けながら、髪全体を濡らして行った。
「熱くないか?」
「うん」
女性の髪なんて洗ったことは無い。自分の短い髪をわしゃわしゃ洗うのとはわけが違うのだろう。細心の注意を払いながら遠坂の髪に触れていく。
充分に濡れたのを確認するとシャワーを止め、遠坂のシャンプーを手に取った。
「じゃ、洗うぞ!」
緊張が走る。とりあえず泡立てて、遠坂の髪が絡まらなければいいはずだ。
シャンプーの付いた手で遠坂の髪に触れる。
「―――ぷっ!あはははは!!士郎ってば、そんなに緊張しなくても平気よ」
「わ、笑う事無いだろ!他人の髪なんて洗うの初めてなんだから」
「ふふ…。だって、士郎の手震えてたわよ」
「っ!」
惚れた弱みというんだろうか。やっぱり俺は遠坂に一生敵わないんじゃないかって思えてきた。まぁ別に、彼女がずっと一緒にいてくれるなら、そんなのはどうでもいいことなのかもしれないけど。
「やっぱり士郎って器用よね〜。力加減調度いいわよ」
「そりゃどうも」
少しずつ慣れてきて、指の腹で頭皮をマッサージするように洗ってやる。いつも遠坂の髪からしてる香りが風呂場に充満した。これってリラックス効果あるのかもしれないな。遠坂らしい、とてもいい香りだ。
「これならたまにこうやって一緒にお風呂に入るのもいいかもしれないわね」
音符マークでも見えそうなほど上機嫌な遠坂の声に、俺も少し調子に乗ってみる。
「お体も洗いましょうか?」
「それはダメ」
そんな即答しなくても……。
思わずがっくりと肩を落としてしまった。
「……それはダメだけど。私の洗い終わったら、士郎も洗ってあげるわね」
「!!」
「あ、もちろん髪だけよ」
糠喜び……。
一喜一憂する俺の反応を見て、遠坂は心底楽しそうに笑っている。やっぱりなんか俺の負けな気がするが、彼女の笑い声を聞きながら、やっぱりどうでも良くなってしまう俺なのだった。
いつか、体の洗いあいっこ出来たらいいのになぁ……などと、心の中で小さな目標を立ててみた。
- end -