風呂ドキ SS-02


「ちょ…しろ、ゃ、んん!」

 狭い湯船の中、無理な態勢で振り向かされた遠坂が苦しそうに喘ぐ。だがそんな遠坂の様子さえ、今の俺には自分を抑える理由になんてこれっぽっちもならない。脱衣所のドアを開けた瞬間から我慢してたんだ。一度関を切って溢れ出した気持ちは、ちょっとやそっとじゃ収まるはずない。
 遠坂の表情を伺おうと薄っすら目を開けてみると、体を捩った状態で俺と唇を重ねる遠坂の乳房の先端が視界に入った。  こうなってくるともう考えよりも先に手が動いてしまう。

「ん、んんっ!」

 深く口付け、かわいらしい膨らみに手を添えた。それだけで感度のいい遠坂の体は素直に反応する。
 湯の中でゆっくりと感触を確かめる。重力の柵から多少開放されたそれは、いつもより柔らかく感じた。

 ――――ぴちゃ、くちゅ、ちゃぽん、ちゅ

 二人の唾液が混ざり合う音、それに俺の手が必然的に湯を掻き混ぜてしまう為、水音が反響のいい風呂場に響く。
 立ち昇る湯気、密閉された空間。遠坂と唇を重ねるうち、風呂場の熱気と彼女の熱さにやられてしまったのだろう。夢中になっていた口付けに息苦しさを感じ、ゆっくりと唇を離した。

「―――は、はぁッ、はぁッ」

 遠坂が苦しそうに息をする。無理矢理振り向かされていた為、片腕で自分の体重を支えていたようだ。ふるふると体が震えている。
 虚ろな瞳が湯船の波を写し、小さな肩を奮わせた遠坂はどこからどうみてもただの女の子だ。普段の強くて鮮やかな遠坂のことも大好きだ。でも、こうやって俺の前だけで見せてくれる彼女の姿が、たまらなく愛しい。
 そんな遠坂に見惚れてると、光を取り戻し始めた瞳がゆっくりと俺に向けられる。

「―――っ!」

 俺は、思わず息を飲んだ。遠坂って、こんなに色っぽかったか……?
 湯に当てられ、息苦しさに紅潮した頬と潤んだ瞳。首や肩には遊び毛がぴったりと貼り付き、彼女の色香をより強いものにしていた。

「し、ろぉ……」

 息も絶え絶えに、塗れた唇が俺の名を紡いだ。その声に強引に唇を奪った俺への非難の色は無く、都合がいいだけかもしれないが、俺には続きを期待する懇願にも思えてならない。

「遠坂、湯に当てられてないか?」
「ふ…ぅ。ちょっと、暑い……かな」
「そっか。よし………っと!」
「きゃ…っ」

 ――――ざばぁっ!

 力の抜けて動けないでいる遠坂を抱き上げる。湯船は滑るので慎重に歩き、洗い場へと出た。そして、そっと遠坂を風呂場の椅子に座らせる。それでも遠坂はふら付いたままで危なっかしい。背中を支えつつ、遠坂の顔を覗きこんだ。

「大丈夫か?」
「〜〜〜〜〜〜っっ!!」

 遠坂の顔がかっと赤くなる。湯船から出したのに、まだ暑いのだろうか。

「まだ暑いか?窓も開けるか?」
「ち、違うわよこの唐変木!!」

 しまった。また怒らせてしまった。

「う……すまん。俺、また遠坂のこと怒らせるようなこと言ったか?」
「っ! わ、悪かったわよっ。士郎は、何も悪くないんだから……」

 怒ったり謝ったり、遠坂は時々本気で分からない。それとも単に俺が鈍いだけなんだろうか。
 ごにょごにょと語尾を弱め、遠坂は俺から目を逸らせてしまった。しかし、俺の欲望はそんな遠坂の様子を見ても待ったは無しだ。それどころか、風呂場の明るい蛍光灯の下で見る遠坂の裸体を目の前にして、昂ぶりを抑えるのに精一杯だ。
 あまり意味無く両手で胸を隠し足はしっかりと閉じられ、露わになったきめの細かい白い肌を水滴がキラキラと装飾している。そんな遠坂を目の前にして、平気でいられる男なんてこの世にいるわけがない。彼氏の引け目を除いてもそう思えるくらい、遠坂は本当に綺麗なんだから。

「遠坂。怒ってないなら―――いいか?」

 遠坂は俺をちらっと見ると、俺の問いかけに黙ったままコクンと頷いてくれた。その反応に安心して、自分の頬が緩むのが判る。こんな時俺は、一体どんな顔をしてるんだか。
 そのまま顔を近づけると、遠坂は素直に目を閉じてくれた。

「ん」

 まだ体に力が入らないのだろう。そのまま俺の首に手を回し、遠坂は自分の体重を預けてきた。胸元に遠坂の膨らみが押しつけられる。お互い塗れている為か、ぴったりと吸い付く様にくっついた俺たちの肌と肌に隙間なんて無くて、遠坂の熱さがそのままダイレクトに伝わってきた。

「ふ…んぅ、む、ちゅ…ぅ」

 舌を絡ませ、いつものように遠坂の緊張を少しでも和らげる。しかし、今日はそんな必要なんて無いかもしれない。

「はっ、んん……、ふぅっ、んちゅ」

 唇と唇の隙間から熱い吐息を吐きながら、遠坂は積極的に舌を絡ませて来る。「変なことしたらダメ」とか言っておきながら、最初からこうなる事を遠坂は期待していたんじゃないだろうか―――そんな都合のいい妄想を抱きつつ、遠坂の舌に溺れていく。
 遠坂が倒れないように支えつつ、二人の躰の間に手を滑りこませる。俺の手の平に調度いい乳房をすっぽりと手の平で包み、緩急をつけて揉みしだく。遠坂の乳首は固くその存在を主張しいて、ぎゅっと乳房を掴むように力を入れると、手の平でその存在を感じる事も出来た。

「ふぁっ、む、んんんぅ!」

 ぎゅっと乳首を摘み上げると、遠坂は強く唇を押しつけて新たな快感に耐えているようだった。それでなくても時折ふるっと体を奮わせながら、呼吸の度に吐息を漏らしている。

「ふ、あぁ」

 溜息と共に感じたほんの少しの身じろぎ。それは、もじっと足の付け根を擦り合わせるような動きだった事を、躰を密着させていた俺は気付いてしまった。
 そんな遠坂の様子にたまらなくなって、膨らみを包んでいた手を閉じられた脚の間に滑りこませた。

「っあ!」

 望んだ場所へ指が到達する前に、遠坂がきゅっと太腿に力を入れてしまう。

「遠坂」

 唾液の橋で繋がったまま囁くと、力の無い瞳をうっすらと開き、俺と目を合わせた遠坂はゆっくりと力を抜いてくれた。

「はぁ……っ」

 つぷり、と粘液が指先に纏わりつく。そのままゆっくりとクレバスをなぞると、再び遠坂の太腿に力が込められる。条件反射と判っていても、俺の手が離れないよう留められたような気になる。自分でも何て単純なんだろうと呆れるが、無意識でしてるなら都合のいいように解釈したっていいじゃないか。

「んっ、ふぅっ、む…んん」

 更に強く唇を重ね合わせる。上と下両方の口をぐちゃぐちゃと犯され、遠坂の息が上がる。それに促される様に、遠坂の秘所からは愛液が溢れて止まらなくなって来ていた。
 固く閉じていたために外へ出られなかったマグマが、俺の指で出口を見つけて溢れてくるような、そんな勢いで溢れてくる密汁はトロトロで、指に力を入れなくてもずぶずぶ中へと誘われてしまいそうな熱を持っていた。

「あ……ふぁんッ」

 その誘われに応じゆっくりと中指を奥へ進めると、遠坂はひくりと喉を鳴らして天井を仰いだ。明るい風呂場で、遠坂の顎から鎖骨に掛けての彫刻のようなラインが俺の目を引く。
 キラキラと光る水滴を舐め取るように、その首筋に舌を這わせた。

「ひゃんっ」

 膣内の感覚に集中していたからだろう。思わぬ場所へ唐突にもたらされた感触に、遠坂が可愛らしい悲鳴を上げた。
 意外な反応に調子に乗って、ちゅっと首筋を吸い上げる。

「や…っだめぇ!跡が、付いちゃう」
「そんなに強く吸ってないぞ」
「ほんと?」
「あぁ」

 ちゅ、と今度は鎖骨に吸いつく。

「っく」

 あぁもう、なんでこういちいち遠坂の反応ってやつは俺を喜ばせてくれるんだ。可愛くて仕方がなくて、遠坂の奥をかき混ぜている指にも自然と力が入る。
 そっと遠坂の表情を見ると、きゅっと目を閉じ軽く口を開け、そこからはっはっと何かに耐えるよう吐息を漏らしていた。小さな顎はワナワナと小刻みに震え、今にも涙が零れ落ちそうな様子に彼女の昂ぶりを感じずにはいられない。
 俺は、さっきからチラチラと視界に入ってきている小さな実を口内に含んだ。

「はああっ!」

 遠坂が腕の中でビクンと暴れる。
 遠坂の中に入ったままの指で奥を掻き回しながら、口内の固い乳首を優しく舌で転がす。ぐちゃぐちゃと厭らしい水音が、風呂場の音響効果で余計卑猥に聞こえる。

「し、ろぅ……私、わた、しぃ!」

 ふるふると腰が震えている。遠坂に最初の絶頂を味わおうとしているのだと、幾度もの経験で悟る。

「遠坂、いいぞ」
「あ、あっ、ああ……はあああああッ!!」

 ビクビクっと遠坂の躰が跳ねる。遠坂を支えている左手にぎゅっと力を込め、強く乳房に吸い付いた。それでも遠坂の中で暴れまわっている快感の波を完全に抑える事は出来ず、湯に滑った遠坂のお尻がつるんと床に落ちそうになってしまった。

「っと。大丈夫か?遠坂」
「はっ、はっ、はっ」

 遠坂は膝立ちの格好で俺にもたれ掛かり、なんとか体を起こしているという感じだったが、すぐに床へペタリと座りこんでしまった。

「遠坂」

 再度名前を呼ぶ。肩で息をしたまま、遠坂はゆっくりと俺と目を合わせてくれた。

「遠坂。俺、もう……」

 そう、遠坂の痴態を見ながら、俺ももう限界だった。己の分身は熱塊となって俺の中心で疼いている。指だけじゃなく、コレで遠坂の中を味わいたいという衝動でどうにかなりそうだ。
 そんな俺の気持ちを察してか、遠坂は無言でこくりと頷くと、力無く、でも包み込まれるような笑顔で優しく微笑んだ。気持ちが弾けそうになる。心の奥の方をぐっと鷲掴みにされた気分だ。
 俺は少し乱暴に遠坂の腕を引くと、四つん這いの格好にして腰に手を当てた。

「……はぁっ」

 肉棒の先を遠坂の秘花へと合わせると、遠坂は艶かしい溜息を漏らす。

挿入れるぞ」

 告げたものの、返事を待たずに腰を前へ進めた。亀頭がゆっくりと遠坂の中を広げていく。たっぷりと濡れた後のため、ずぶずぶと抵抗なく侵入できるものの、俺のモノにぴったりと吸いつく肉壁の感触にいつもドキリとさせられる。

「はっんん…」

 挿入の異物感に遠坂が喉を鳴らした。そこに以前のような苦痛の色は無く、満たされた充足感すら漂っているように思えた。
 遠坂の桃のような膨らみを両方へ広げると、己が彼女の中へ侵入していく姿を鮮明に見る事が出来る。風呂場の明るみの中でその光景を見る事は、現実味が全くといっていいほど感じられなかった。夜の闇の中で感覚を頼りに行っていた行為とは違い、視覚までクリアーにされてしまうと何だか他人のものを眺めている様だ。

「は、あぁ」

 やがて遠坂の尻と俺の腰がぴったりとくっ付く。全部遠坂の中に入り切り、密の熱さを感じながら彼女の肉の動きを全部で感じる。どんなに視覚からの情報が他人事に思えてもこの感覚だけは本物で、あまりの気持ち良さに眩暈を覚える。
 だがそれも一瞬。風呂場に入る前から見せられ続けた遠坂の姿にすっかりやられていた俺は、遠坂の様子を気遣う余裕も無く挿入を開始した。

「あっ、ん、士郎っ、早…い!」

 ゆっくりなんてしてられるか。挿入してすぐ自分のペースで動き始めた俺に抗議の声を上げる遠坂だったが、痛がったり苦しんだりしてる風でもなかった。なら、俺は止まれない。
 遠坂の腰を掴んで引き寄せる。俺も腰を引いて突き上げる。力の抜けてしまっている遠坂は、両腕を突っ張っているのが精一杯という感じで、俺に身を預けていてくれている。パンパンという肌と肌のぶつかる音が小気味良く風呂場に響いた。

「ああっ、あ、はぁッ、ん、んぅ、あああっ」

 挿入に合わせて遠坂が声をあげる。バックから挿入してる為、見えるのは遠坂の白い背中と、乱れ始めた黒い髪。ただ下を見れば俺が遠坂に出たり入ったりする様子が鮮明に見える。
 ぐちゃぐちゃと掻き混ざる音に、遠坂の密でてらてらと輝く赤黒い肉棒を他人のものの様に眺めながら、遠坂の躰に溺れていく。

「ひぁぁっ、あん、士郎ぉ、し…ろぉ、ひぅッ、ひあああぁ」

 遠坂の声が上ずっている。こうしていて気持ちいいのは、俺だけじゃないのは知っているつもりだ。でも、遠坂は声色でそれを伝えてくるのみで、自分から『気持ちいい』と俺に教えてくれる事は今まで無かったはずだ。
 判っているはず。でも、知りたい。

「遠坂…気持ち、いい……の、か?」
「ば…っかぁ!そ、んなこと、聞かないで、よぉ!!」
「だって、聞かなきゃ判らないじゃ…っ、ないか」
「うそぉっ!士郎、いっつも勝手にっ、はぁ、決めつける…っじゃない!」
「うん……、だから、確かめたかったんだ。遠坂が、どんな時感じるのか…」
「ばか…ぁ!士郎の、ばかばかばかー!!そんな、こと……ふぅんっ……言えない、わよぉ!」

 喘いでいるのか叫んでいるのか良く分からない口調で遠坂が捲くし立てる。
 ばかと言われようが何と言われようが、知りたいと思ったんだ。俺ばっかりじゃなくて、遠坂も気持ちいいんだって、ちゃんと遠坂の口から訊きたいと思ったんだ。

「な、遠坂…」

 名前を呼んで促す。

「……やだぁ」

 俺に突かれたまま、ふるふると首を横に振る。
 ちらりと見える顔は羞恥に染まり、遠坂の感度を上げているのだろう。ただでさえキツイ密壷をきゅうきゅうと締めつけて来る。ゾクリ…と、何かが背中を走り抜けていった。どうしても言わせたい。遠坂の口から真実を知りたいという衝動が抑えられない。

「遠坂。俺、遠坂がどう思ってるのか、知りたいんだ……」
「は…、あぁぁっ――――」

 でもそれは、俺の本当に正直な気持ちで。とても大切な事で――――


「きもち、いぃ……っ!」


 ぐちゃぐちゃと混ざり合う遠坂の膣が奏でる水音にも掻き消されてしまいそうなほどか細い声で、搾り出すように、でも確かに遠坂はそう言った。