Fu-Ko-Q Present

arataxia〜風の紅き丘の上〜

雨の日、其処へ帰する 下

「承知した」

 凛を脅えさせないよう、努めて優しい声色を使う。何も命を奪おうというのではない。しかし、己のマスターを組み伏せその体を好き放題出来る事の何と甘美なことか。
 凛はまだ羞恥に囚われているようだが、私の方はすっかり理性など何処かへ置いて来てしまったようだ。凛への後ろめたさは消え、彼女に酔う事しか頭に無い。
 私は、ゆっくりと凛の両足を開く。自分から強請った手前なのか、凛の抵抗は一切無かった。べとべとになった秘所が、唯一の灯りであるベッド脇のスタンドの光に晒される。

「凛、どんな風になっているか分かるか」
「やっ…見ないで!」
「そんな分けにはいくまい。気持ち良くして欲しいのだろう」
「見なくたって、出来るじゃない…っ」

 どれだけ濡らしてしまっているのか分かるのだろう。オレンジ色の光にテラテラと妖しく輝く凛の秘所が、ヒクヒクと私を誘っていた。せっかく素直に私を求める姿を、見ないわけには行くまいに、しかし凛は弱々しく抗議の声を上げる。
 それでも足を閉じようとしないのは、彼女の間違った意地なのか。

 ――――くちっ

「ひゃあぁぁんっ!」

 そっと指で撫で上げただけで、凛の口からあられもない嬌声が上がった。ずっと触れて欲しくて焦らされていた所為だろう。感度がいつもよりも高いようだ。
 そのままくちゃくちゃと、溢れ出した愛液を掻き混ぜてやる。結果、凛の花弁には指が掠る程度になる。

「ふぅんぁぁ、ああぁぁ……っ」

 しばらくそうしていてやると、凛の腰が動き出した。私の指に自分から擦り付けるように腰を突き出し、指の動きに合わせてくねらせる。

「凄い音だな、凛」
「やっ、いやぁ…っ」

 凛の腰の事にはあえて触れず、ぐちゃぐちゃと音を立てて掻き混ぜ続けた。凛の腰は私の指に向かってゆっくりと動いてくるが、私は凛が近づいた分だけ指を離す。触っている面積は変えずに、凛が欲しがる様を楽しんだ。

「な…んでぇ……?」

 より深い快楽を得られない凛が泣きそうな声を上げた。

「なにがだ?」

 当然私は知らばっくれる。今日は、徹底的に凛の中にある淫らな衝動を認めさせたかった。

「んっ!わ、かってる…くせにぃ……」

 自ら望んで抱かれているのだと、その心に刻み付けたい。

「言われなければ、分からない」
「もっ、と…シテって、言っ…たじゃな、い」
「だから、しているだろう」
「―――っ!」

 こんなのは屁理屈だ。いつもの聡明な彼女なら、そんなことはとっくに理解して言い返してきている事だろう。しかし、快楽の奥に沈んでしまった知性は、こんなことくらいでは呼び起こされはしない。

「黙っていたのでは分からないぞ、凛」
「いじ、わる……」
「マスターの命令以外の行為をしない、優秀な下僕サーヴァントだと言って欲しいものだな」

 凛の顔に諦めの色が浮かんだ。

「アーチャー……もっと奥…を、触って」
「承知した、マスター」
「んあああぁぁぁぁっ!」

 微かにしか触れていなかった中指に力を入れる。凛の愛液を潤滑油にしてまずは入り口を解す。しかしそこは、そんなことは必要もないほど解れていて、私の指を飲み込もうと密壷が奥で蠢いていた。

「あっ、ん、ふぁぁ…っ」

 その誘いに応じ、ゆっくりと円を描く様に指を奥へと進めていく。にちゃにちゃと粘性の強い液体が、彼女の中を満たしていた。

「あぁ…アーチャぁぁ……」

 やっと与えられた体の奥への快楽に、凛が悦びの声を上げる。彼女が喜んでいるのが膣の壁を通して指に伝わってきた。一般の男性よりも少々太くてゴツゴツしてるであろう私の指を、凛の膣がぎゅうぎゅうと締めつける。指でこれだ。肉棒を突っ込んだ時は油断ならないと、ふと脳裏に過ぎった。

「凛、これでいいのか?」

 奥にコリコリしたものを感じ、これ以上進め無いことを凛に告げる。

「う…んぁぁ…気持、ち、いいよぉ……」

 羞恥心まで壊れてしまったのか、凛は自ら腰を動かし、私の指の感触を楽しんでいる。こうなってしまっては、凛をからかう楽しみも半減してしまうというものだ。
 少し残念に思いながらも、マスターの要望に応えるべく、私は指を動かし始めた。

「ひゃぅぅぅんっ!」

 密壷の中に収まった指をくの字に曲げ壁を擦ってやると、凛が一層甲高い声を上げた。そのまま爪を立てず、指の腹で壁を緩急つけて刺激してやる。

「はぁっ、ああぁぁんんん」

 凛の腰が跳ねる。より強い刺激を求め、私の指にあわせて艶かしく腰を踊らせる。
 私は指を抜き差ししながら、凛の膣内に愛撫を加えていった。

「アーチャぁ、アーチャぁぁっ!」

 あっという間に凛が切羽詰った声を上げた。焦らされ火照り切った体は、簡単に絶頂への階段を駆け上がってしまったようだ。
 散々焦らしたお詫びに、そのまま凛を導いてやることにする。

 ―――じゅるぅ

「っああぁぁぁぅ!」

 指を入れたまま、凛の陰核に口付け、吸い上げた。ぎゅぅっと膣が締まる。たまらないのだろう。シーツを強く握り締め、体を硬直させた。

「ふぅんっ!だ…めえぇっ」

 限界と告げる声。凛、耐える必要などない。
 指を動かすスピードを上げる。小さな蕾に這わせている舌も、その皮を剥ぎ、一切の躊躇なく刺激する。じゅるじゅるとした唾液の音と、ぐちゅぐちゅとした愛液の二重奏が、二人の鼓膜を侵していく。

「ひ、ぅ……っ、アー…チャあぁぁぁぁぁっ!」

 遂に凛が絶頂へと達する。それと同時に、膣内からどぽっと大量の愛液が溢れて来た。陰核に舌を這わせていた私は、その愛液で口元から顎がベトベトになる。ツンとした生臭い香りが鼻についた。

「―――はっ、はぁっ、はぁっ」

 しばらく体を痙攣させていた凛の呼吸が戻る。それを見て凛の膣内から指を引き抜くと、凛に見せつけるように顎についた愛液を拭った。
 絶頂の余韻から虚空をさ迷っていた瞳が、私のその姿を捉える。ぼんやりと見つめられ、また私の加虐心が首をもたげる。

「凛、君の愛液で汚れてしまった。綺麗にしてくれないか」

 彼女の体内にあった指と、顎を拭った手の甲を、凛の口元に近づけた。
 そういう凛の顔も私の精子がこびり付いたままで、美しい髪は汗で頬に貼り付き、まだ息が上がったままである。乱暴されたと言われたら、十人中十人がそれを信じるだろう。
 しかし、そんな姿の凛は、目の前の手に注いでいた視線を一瞬私に向け、何も言わずに私の手に戻すと、おずおずと舌を突き出しペロペロと自分の愛液を舐め始めた。

 ぞくり―――

 その姿に何かが背中を駆け抜ける。
 もう小細工はいいだろう。
 この娘を、喰らおう。

「アーチャーっ! 私、まだ……」

 凛の口元から手を取り上げ、凛の股の間に体を割り込ませた。それだけで次の行動が予想できたのだろう。息がまだ整わない凛は、衝動に突き動かされているだけの私に酷なことを言う。
 凛の言葉を無視し、私は己を入り口に宛がえた。

「―――あっ」

 その感触に、凛は思わず声を漏らす。

「凛、挿入れるぞ」
「やっ!だめ…っ、アーチャー!」

 私の腕から逃れ様と体を動かすが、達したばかりで体に力の入らない凛の動きは、私の挿入の妨げになど全くならない。それどころか、どこか扇情的な拒否反応は、私の欲情をただ煽るだけだ。

「そんなのは逆効果だ、凛」
「あっ、あぁぁ……っ」

 ずぷずぷと簡単に飲みこまれていく。絶頂の余韻か、時折ヒクつく膣内が心地良い。その感触を楽しみたくて、ゆっくりと時間を掛けて挿入した。
 奥へ進むたびに、凛は喉を鳴らしている。昂ぶりすぎた快感に、瞳からは涙を零していた。

「ひぅ…ん」
「―――は、凛。全部入ったのが分かるか」

 私の問いかけに、凛は首を横に振った。落ちつく前に無理矢理引き上げられた快楽に、自分の体のことも判断でき無くなってしまっているのだろうか。

「なら、分からせてやろう」
「んうっあ、ああぁぁぁっ!」

 いきなり、激しい挿入を開始した。ヒクつき、締めつけてくる膣内に動かずいろというのは無理な話である。かといって、優しくしてやる気にもなれなかった。この衝動は、自分の存在を彼女に刻み付けたいというものなのだから。

「はぁんっ!ふぅっ!あぁっ!」
「凛、凛―――」

 両足を抱え、激しく腰を打ちつける。ただでさえ乱れていた髪は、どちらのとも分からない体液に貼り付き、凛の白い体に纏わり付いていく。

「やぁ……っ、だ、めぇぇぇっ!」

 あぁ、凛。そんなに早く達してしまうのか。
 凛の落ちきっていなかった昂ぶりが、無理矢理凛を絶頂へと押し上げる。きつく締めつける膣壁。それでも、まだ満足するわけには行かない。

「凛、我慢するな……」

 私も息が上がっている。汗がパタパタと凛の上や、色々な体液で汚れてしまったシーツに染みこんでいく。

「アー…チャぁ、はぁっ! また、イクの、イっちゃうのぉぉ!」
「凛、そのまま―――」
「あっ! イク、イ…っ、あぁぁ…イクぅ、イッくううぅぅぅぅんッッ!!」
「―――くっ」

 容赦なく凛が締め上げる。凛の長い絶頂感が収まるまでじっと堪え、しかし同時に凛の達した様子を楽しむ事も忘れない。自分が精射する時とは違う、凛をイかせたという満足感が私の心を満たしていった。

「―――っ、はぁっ、はぁ…」

 私の体の下で、息を荒げながらも絶頂の余韻に浸る凛は本当に可愛くて、もっともっと泣かせたくなる。
 なんて歪んだ征服感だろう。凛の気持ちを無視し、一方的な快楽で塗り潰す。しかし凛はそんな私でさえ受け入れ、こうして体を開いていてくれるのだ。
 ふるっ、と体が震えた。武者震いだろうか。凛の呼吸が少し落ち着いたのを確認すると、私は挿れたまま凛の体を180度回転させ、うつ伏せにさせる。力が完全に抜けてしまっている凛を動かす事など、私には容易だった。私が腰を支えていなければ、ぺたりとベッドに沈んでしまうだろう。

「あ……、え?」

 態勢が変わり、虚ろだった凛が意識を取り戻す。後から挿入された形になった凛は、お尻だけを高く上げ、上半身には全く力が入っていない。
 私は、この獣が交わるような格好のまま、凛を後から突き上げた。

「ん、はぁんっ!」

 凛がシーツを掻き毟る。可愛い声で鳴き、秘所からは愛液が留めなく滴り落ちる。もう脳内には私以外の何も残ってはいないだろう。
 ぐちょぐちょと密壷が掻き回される音が雨音に混じる。
 ―――あぁ、そうか。今はまだ昼間で、外は激しい雷雨だったな。
 五感全てで凛に溺れておきながら、どうでもいいことが頭を過ぎった。

「は、り…ん……」

 それと同時に、私にも限界が近い事を悟る。

「アーチャぁぁ…」

 凛の切ない呼びかけに、自然と体が動く。凛の片足を持ち上げ肩に掛けると、凛の両側に手をついて腰を動かす。凛の微かに開いた瞳が私の姿を確認し、安堵したように綻んだ。

「――――」

 そんな小さなことで、ぎゅぅっと胸が締めつけられる。この心が歪んでいても、現身でなかろうと、この少女は私に絶対の信頼を置いていてくれるのだ。

「くっ…、凛、凛、り…ん……」
「アーチャー、アーチャぁぁ……」

 止まらない。体も心も、どれだけ支配したくとも、結局溺れてしまっているのは自分なのだから。水に包まれた世界で、人に海への郷愁があるのなら、サーヴァントである私の帰る場所は、召喚者マスターであるこの少女だけ――――

「凛、もう……っ」
「アーチャ…私も、またぁっ!」
「―――――っ!」

 奥へ腰を叩きつけた後、弾けた。凛の膣の締め付けに素直に従う。ドクドクと凛の中を私が満たしていくのを、恍惚とした意識の中で感じた。

「ふわぁ、出て…イクぅッ、ぅんぁぁ…はああああああああぁぁぁっ!」

 精射感に凛が悶える。私から少し遅れ、凛は三度達したようだ。ビクビクと数回痙攣し意識を手放していく凛を、私はずっと見つめていた。



◆◆◆◆◆



 外が明るんでいる。いつの間にか雨は止み、厚く空を覆っていた雲も何処かへと流れて行ったのだろう。
 凛の体を手近にあったティッシュで軽く拭き、彼女の横に体を倒した後、私もまた少しだけ意識を落としていたようだ。事のたびにこれでは、肝心な時に主を守れない。少し、考えなければなるまい。

「アーチャー、起きた?」
「!」

 まだ眠っているとばかり思っていた凛に真横から呼ばれ、思わず跳ね起きる。

「凛、本当に―――」
「謝らないでよ」
「しかし…」

 凛も私に合わせ、体を起こす。シーツを胸元で握り締め、隠しているつもりなのだろう。その方がよほどそそるのだと、今度教えてやらねばなるまい。

「謝るくらいなら、最初からしないで」
「む」
「いいの!アンタは私のサーヴァントなんだから、ちょっとくらい甘えてもっ」

 照れているのか、凛は頬を染め、怒ったようにそう言った。
 このお人好しはいつだってそうなのだ。私の間違いを許し、受け入れ、隣にいることを良しとしてくれる。そんな凛に付け入って、私は彼女を手に入れている。

「アーチャー、そんな顔しないで」

 凛の手が私の頬に触れる。

「私だって……その。―――アーチャーにされるの、嫌じゃないんだから」
「凛―――」

 覗き込んで来たはずの凛が視線を逸らす。
 彼女の精一杯の気持ちを受け、私は凛を抱きしめた。

「ちょ…っ、どうしたの?」

 腕の中でじたばたと暴れるマスターだが、私が離さないと分かると少しずつ大人しくなる。

「もぉ。世話の焼けるサーヴァントね」

 凛の手が背中に回る。腕の中に収まっているはずの凛に、私の方が抱きしめられているような錯覚を覚えた。


 この身は彼女が生んだモノ。
 この身は彼女を守護し、彼女の剣となるモノ。

 帰するは、君。
 愛すも、君。




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