OUTLINE
カゲロウ+あらたゆん+相模陸合同誌
『Love Souvenir』
There is no place like home.
鏑木虎徹×友恵
A5│44P│表紙フルカラー│オフセット
2012.03.18 発行
全年齢向け
Guest:表紙彩色 きりたに雪佳【
secca】
KAGEROU
YUN ARATA
「お母さんって、美人だよね」
久しぶりに彼の自宅まで遊びに来てくれたと思ったら、娘はソファーに寝そべりながら、そんなことをぽつりと呟いた。
楓の目の前には、母親の写真が貼り付けられたアルバムが広げられれている。それはもう十年以上前の、彼女の母親が彼と結婚したばかりの頃のアルバムだった。
「当ったり前だろぉ? パパの自慢の奥さんなんだからなっ!」
手に持っていたコーヒーカップを乾杯するように持ち上げ、虎徹は声高らかに叫ぶ。娘との久しぶりのコミュニケーションに、彼はなんとかこの場を盛り上げられないものかと、ずっとその機会を伺っていたのだ。
しかし娘から注がれた視線は、なぜか冷ややかなもので。
「はぁー…。お父さん、それ逆!
私はね、どうしてこんなに綺麗なお母さんが、お父さんみたいな人と結婚したのかってことを言いたいの!」
「ええええぇ〜……」
ビシィッ!っと人差し指を突き付けられてしまい、持ち上げたコーヒーカップが所在無く空中を彷徨う。
「そりゃあお父さんはワイルドタイガーだし、ヒーローやってる時のお父さんはカッコイイと思うけど」
「楓ぇ〜!」
「でも!」
一瞬の喜びも束の間、楓の厳しい声に虎徹はビクリと緊張を走らせる。
そんな父親の様子は微塵も気に留めず、年頃の彼女は無情にも強い口調で言い放った。
「それを取ったら、男として恋愛対象にはならないもの。絶・対・に!」
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RIKU SAGAMI
質問:娘に好きな人が出来ました。
その相手が職場の同僚だった場合、父親としてはどうしたら良いのでしょう?
「どうしようもねえな」
「どうしようもないわねえ」
左右からユニゾンで己の悩みを一蹴されて、男はがっくりと頭がテーブルにつくくらい深くうなだれた。
馴染みのバーの片隅に陣取り、片手にグラスを握ったまま、ワイルドタイガーこと鏑木・T・虎徹はもう小一時間もこの状態である。彼の周囲には暗雲が目視できる勢いで立ち込めていて、鬱陶しいことこの上ない。机に伏せた虎徹の肩越しに視線を合わせて、アントニオとネイサンは深々とため息をついた。
最近どうにも覇気の無い彼を心配して、何か心配事でもあるなら聞いてやろうと酒の席に誘い出したはいいが、アルコールが程良く染み渡った頃に虎徹の口から漏れたのは、冒頭の話である。
仕事に関する内容ならいざ知らず、流石に娘の恋愛問題とあっては、彼らに出来ることなど何も無い。がんばれ、と背中をぽんぽん叩いてやるくらいが関の山だ。もっともそのくらいの励ましで彼の精神ダメージが回復するわけもなく、結果こうして彼らは虎徹の堂々巡りな愚痴こぼしに付き合っているのだった。
「最近は電話してもバニーの話ばっかだしよぉ……バーナビーの生写真を買って送ってね、とか毎度頼まれる俺の気持ちになってくれよ!」
「まあ、仕方ねえんじゃねえか? 楓ちゃんにとっちゃ文字通り命の恩人だし、アイツは顔もいい上に外面だけは完璧だ。あのくらいの子供なら、ああいうヒーローに憧れるのも無理はないだろ」
まさに正論とも言えるアントニオの言葉に、虎徹は更にぐだぐだと沈み込む。
「うるせぇ……おまえらに何が分かるってんだ」
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PIXIV
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